ご仏前でよい香りのお線香、お香を焚きますと、気持ちがあらたまり、ひきしまります。香・華・灯は仏前供養の基本といわれ、お仏壇には必ず香炉が置かれて、線香(お香)が供えられます。1本の線香(お香)の香りは、分けへだてなく平等にその場にいきわたり、ほとけ様の慈悲心にもたとえられます。
どうかぜひ良い香りのお線香をお供えいただけたらと思います。
お香の歴史
仏教が伝来したのが552年(または538年)といわれます。日本書紀によると、それからわずか43年後、推古天皇3年に淡路島に香木が漂着し、それを焚いた島人がそのあまりの良い香りに驚き、朝廷に奉ったとあります。
推古天皇元年には聖徳太子が摂政につきましたので、まさに仏教の興隆と同時期に日本のお香文化が始まったといえます。
その後、遣隋使、遣唐使などによる大陸との交流を通じて、香木類が日本にもたらされました。754年に鑑真和上が来日しますが、鑑真は戒律だけではなく、お香の材料、調合法や漢方薬の処方などを伝えました。
その後、香りの調合は仏前の供養のためだけではなく、当時の貴族たちによって生活の中の文化として花開いていきました。
そして室町時代には、東山文化の中で現在までつづく多くの日本文化が生まれました。書院造りなどの建築をはじめ、華道、茶道、香道、和歌や連歌など数え上げればきりがありません。
江戸時代になるとお香の文化は町人の世界にもひろがり、香道の流派も生まれます。線香の製造技術は中国から伝わりましたが、日本で線香が作られはじめたのも江戸のはじめごろといわれています。
線香・お香の種類
線香
線香には長さの異なるものが沢山あります。いちばん一般的にご家庭のご仏前で焚かれる線香は、長さ14センチ前後、長寸と呼ばれるものが長さ25センチ前後です。最近はミニ寸といって、小型仏壇や現代仏壇(都市型仏壇)に合う寸法(10センチ前後)のものも出回り始めました。
その他、渦巻き型、コーン型などがあります。
焼香(しょうこう)
香木や漢薬系の材料を細かく刻んで調合したものです。五種香、十種香などとも呼ばれます。ご葬儀や、ご法事でおなじみだと思いますが、宗派によっては、ご自宅のご仏前でも良く用いられます。
抹香(まっこう)
細かい粉末状のお香。
寺院で使われることが多く、一般的にお焼香に用いる、いわゆる『焼香』に間違われることがありますが別のものです。
塗香
たいへん細かい粉末状(パウダー状)のお香です。
少量を手にすり込んだりして、主に密教系寺院で使われることが多いお香です。
香木
伽羅、沈香、白檀などといった、香木そのもの。香木の姿のまま、置物として用いられることもあります。お香を焚くときは、角割り、細割り、刻みなどにして用います。香道においては伽羅、沈香といった香木を細かく割って用います。室町時代に産地や香りによる沈香の分類が行なわれましたが、これを六国五味(りっこくごみ)といって、専門家が沈香の品質を判断するための基準のひとつとなっています。
六国=伽羅(きゃら)、羅国(らこく)、真那賀(まなか)、真南蛮(まなばん)、寸門多羅(すもたら)、佐曽羅(さそら)
五味=甘(かん)、辛(しん)、酸(さん)、苦(く)、鹹(かん)
練香・印香
練香(ねりこう)は粉末の香料に蜂蜜や梅肉などを加えて練り上げたものです。印香(いんこう)は粉末の香料を固めて花や葉などの形に抜いたものです。両方とも、お茶席などで良く使われます。居間などで香りを楽しむためにも用いられます。
座敷香(部屋香)
文字通りお部屋や玄関などで香りを楽しむためのお線香です。香木系のものやフローラル系の香りなど、沢山の種類のものがあります。
スティック状のものは、一般的にご仏前で用いる線香よりも短く、太く作ってありますが、中身そのものはご仏前用のものとはっきりとした区別はありません。特に高級なお線香は、座敷香としても使われます。
匂い袋
刻んだお香の原料を袋に詰めて、香りを楽しむためのものです。防虫効果もあるので、箪笥に入れたりすることもあります。
ご仏前での供え方
線香は一般的に1本から3本供えることが多いようですが、正式には宗派により異なります。天台宗と真言宗は3本、浄土宗、臨済宗、曹洞宗、日蓮宗は1本、とするのが正式なものとされています。浄土真宗は、ここで説明している仏具とは異なりますが、線香を数本に折って寝かせて焚きます。
お焼香の回数は、天台宗、真言宗は3回、臨済宗は1回、曹洞宗は3回、日蓮宗は1回(もしくは3回)、浄土真宗本願寺派は1回、真宗大谷派は2回、浄土宗は特に決まりはないとされています。

