お仏壇にご本尊を安置することについて

お仏壇は仏教徒の礼拝の場ですから、本来ご本尊を安置して崇敬するのがふさわしいと思いますが、日本人は、祖先崇拝、祖霊祭祀といった伝統を大切にしてきましたので、どちらかというとお仏壇は「お位牌を安置する場所」というイメージをお持ちの方のほうが多いのかもしれません。
たしかに何代も続いているような古い家柄のお宅でも、ご本尊が無く先祖のお位牌をお仏壇の真中に納めて、先祖供養を中心に長くお祀りされてきたという場合も多いと思います。
お仏壇は、亡き方、ご先祖様を偲び報恩感謝をする場として、また遠いご先祖さまから続くかけがえのないいのちの大切さ、家族のつながりを感じる場として、家庭の精神生活のよりどころとなってきました。

それではお位牌だけでもいいような気がしますが、なぜお仏壇にご本尊を安置するのでしょうか?
お仏壇にご本尊をお迎えし礼拝する意味はとても一口では言い表せませんが、そのひとつとしましてはせっかくのお寺様(ご本尊)とのご縁(法縁)を大切に、限りない智慧と慈悲の仏様に形を通して出合い、おおいなる教えに導かれて自分自身の中に少しずつ仏さまのこころ、やさしい思いやりのこころを見いだしていく、ということにあるのではないでしょうか。
でも各宗派によって考え方もいろいろです。例えば浄土真宗の場合は、お仏壇は浄土を表し、すべての人をすくうという阿弥陀如来の誓い(誓願)を信じさせていただく感謝とよろこびで仏さまに手をあわせます。阿弥陀如来のおられる永遠絶対の光明の世界である浄土を心のよりどころとするのです。お仏壇は阿弥陀如来を安置するところであり、本来お位牌を祀るということもいたしません。

仏壇や仏像の仏(佛)という字は仏陀の仏で、もともとは釈迦如来、阿弥陀如来などの仏様(如来)のことをさします。
ところが日本では、亡くなった方のことをいう「ホトケ」にもこの字をあてたので、両方とも「ほとけさん」ということになり、「ほとけを祀る」という言い方が色々な意味で用いられることになりました。そのようなこともいわゆる「ご本尊」を判りにくくしているひとつなのかもしれません。お仏壇も、お釈迦様も、阿弥陀様も、観音様も、ご先祖様も、含めて全部「ほとけさん」です。
もともとは、「仏像(如来)を安置する壇」だから「お仏壇」です。そのことからご仏像なしではお仏壇と呼べないという理屈をいうこともありますが、位牌だけ安置してあっても、あるいはお位牌もない場合でも一般的には「お仏壇」と呼びますし・・・、結局はそれぞれの方のそれぞれのご縁ということでしょうか。

閑話

静岡県の一部では、お仏壇のことを昔(50年位前まで?)は「持仏(じぶつ)」と呼ぶ習慣がありました。「お持仏さん」あるいは「お持仏っつぁん」という具合です。
持仏というのは「念持仏(ねんじぶつ)」の略で、「念持仏」は個人が身近に安置して礼拝する仏像のことです。
この辺は禅宗の多い地域ですからどちらかというと位牌を中心に、先祖供養を主体としてきたイメージがありますが、この呼び習わしはどこからきたのか、興味深いところです。
他の地方にもお仏壇のことをこのように呼んだ(あるいは呼んでいる)地域はあるでしょうか?
ちなみに浄土真宗では、お仏壇のことを「お内仏(おないぶつ)」と呼びますが、これはご本尊の阿弥陀如来(浄土)をさす言いならわしです。